「顧客理解」のために、最も大切なこと
西井 顧客理解についての話も、お聞きしたいですね。西口さんとお話ししていると、企業が主語になることが非常に少なく、お客さまが主語になることが多いと感じています。どうすれば、そんなふうになれるのですか。
西口 失敗の積み重ねしかないですよ。一番ビジネス判断と間違う出発点は、「マス思考」です。複数の個性あるお客さまを名前のない集団と捉えて、ビジネスを行ったときは、大失敗するか、失敗するか、あるいはそこそこの成功しかないんです。
本当にうまくいくケースは、ひとりのお客さまに対して、やるべきことが見えて、それが拡大されたときしかないと思っています。私もコンサルティングをする中でいろいろな話を聞きますが、企業の課題は、全部そこに集約されていると思います。
よくあるのが、新規のお客様どころか、自社のロイヤル顧客さえ理解していないケースです。そもそも、どうやって自社商品に出会ったのか?なぜ自社商品を買ってくれているのか?もしくはなぜ自社サービスを使い続けてくれているのか?理解していないんです。
西井 よくわかります。
西口 私がかつて在籍したP&Gは、お客さまの洞察に関してマニアックなほど徹底している会社でしたが、実はお客さまが離れ、業績が頭打ちになり、株価が半分まで落ちて、敵対的買収を仕掛けられるのではないか、という状態に陥った時期があります。
そのときのP&Gは、グローバル展開のために地域組織とブランド組織をマトリックス形式にして効率化し、どうすれば、それが成立するかばかりを考えて、全てが内向きになってしまっていたんです。
その後、当時のCEOが解任され、新たにA・G・ラフリーさんが着任して「Consumer is Boss(消費者がボスである)」という言葉を掲げました。その言葉を初めて聞いた私は、あまりにも単純すぎて、目が点になり、いよいよ会社が潰れるのではないのかと思ったのですが、全くそうではありませんでした。そこから、全社員が一気にお客さまの話をするようになり、2~3年後には、完全に復活して強い会社になっていました。
結局のところ、ビジネスはひとりのお客さまをどれだけ理解しているかに尽きます。巨大な企業でも小さな企業でも、それは一緒だと思います。
「Co-Learning(コラーニング)」は、スマートフォンアプリの名称として継続して使用いたします。